+Sariel+
そうだ。
あたしはずっと、死にたくなかったんだ。
優しかった、お義父さんに戻ってほしくて。
あたしを全力で抱きしめてくれたお母さんに戻ってほしくて。
助けて。
その一言が、ずっといえなかった。
あたしに暴力を働いたお義父さんにも。
それを見て見ぬフリをして、愛人のところに入り浸っている、お母さんにも。
・・・そして、あたしのことを少しでも心配してくれた、クラスの子にも。
本当のあたしを知ってほしかった。
でも、近づかれるのも怖くて。
バリアを張って。
言葉で他人を傷つけて。
その繰り返しで。
言葉でも暴力でも、同じくらい深い心の傷になるのに。
傷つけられるほど、辛いことはないって。
あたしが一番よく、知ってたのに。
「ギン・・・」
死にたくない
死にたくない
死にたくない。
死ぬのが怖い。
抱きしめてほしかった。
ずっとずっと。
温かい言葉と、人肌のぬくもりで。
こうやって、抱きしめてほしかった。
「アズサちゃん・・・俺に、全部苦しみを背負わせて。
・・・俺、それを持っていくから」
「・・・え??」