+Sariel+


ギンが、あたしを強い力で、引っ張った。

あたしはギンが居た方向に引っ張られて、地面に転ぶ。

その代わり・・・今度は、さっきまであたしが立っていた場所に、ギンが立った。



「・・・ギン・・・!!!!!」



あたしは思わず叫んだ。
ギンは優しく微笑む。


「俺が死ぬから。
アズサちゃんの苦しみと一緒に、ここから飛び降りる。
そしたらきっと、アズサちゃんの心は軽くなるよ。きっと、大丈夫」



「・・・嫌・・・やだよ・・・じゃあ、あたしが死ぬから・・・ギンは生きてよ・・・」


こんな良い人、死んじゃいけない。
あたしが死ぬから。
その代わりにギンが生きれば良い。

死んでほしくない。

失いたくない。


あたし・・・あたし・・・。



「生きて。俺の分も。幸せになって」

「やだよ・・・ずっと傍にいて。
大好きだから。
ギンがいなきゃ、生きてけないよ・・・」





ギンが好き。


最初は、なんでこんな奴がって思った。

こんな男、だいっ嫌いって。

でも・・・やっぱりギンはギンで。

すごく優しくて。
あたたかくて。



「・・・ありがとね、アズサちゃん」



ギンの顔が、朝日を浴びてオレンジ色に輝いた。



「・・・俺も、大好きだよ」



あたしは立ち上がろうとして。足に力が入らないことに気がついた。


・・・きっと、腰が抜けちゃってるんだ。





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