+Sariel+




「・・・知らないです。
あたしは、ギンって呼んでましたけど・・・」


「波多野 銀月(はたの ぎんげつ)。
・・・すっげぇ名前だろ??」



銀月・・・。

やっぱり、ギンは銀だったんだ。

そんなことに、どうしようもない安心感を感じる。


「あいつ、昔から自分の名前が嫌いで。
まぁ、目立つ名前だよな。
いつも、銀って呼ばせてたよ」

「あの!!」


声を出して。
出した後に少し、後悔する。

ギンに似た、優しい目でマスターはあたしを見た。



「ギン・・・銀月さんとは・・・どういう関係で・・・」

「幼馴染ってとこ??
・・・俺達、親がいなくてさ。
施設育ちなんだよ」


「しせ・・・つ」



ボソリと呟く。

ギンに・・・親がいなかっただなんて・・・。



「あいつ、ひねくれてて。
俺もひねくれてたけどさ。

幸せとか、そういうの、見出せない奴だった。

・・・まぁ、あんなひどい施設だったしな。
本当に、子供達に食べ物を与えるだけ。
時には、殴られたりもした。


でも、流石に、高校の時あいつが金髪で帰ってきたのには、驚いたよ」



「金髪なの、高校からなんですか??」



マスターは無言で頷く。

きれいに染められた、それこそライオンの鬣のような金髪が、頭に浮かぶ。




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