+Sariel+
「あいつ、俺の彼女を殺したんだ」
言われたことの、意味が理解できなかった。
「・・・え・・・でも・・・」
「その当時の俺の彼女。
すっごいナイーヴっていうか、繊細っていうか・・・。
とりあえず、傷つきやすい奴で。
でも、俺はそんなあいつが大好きで。
俺が一生守ってやるって思ってて。
・・・俺、すっげぇ幸せで」
でも。
さっきまで幸せそうに笑っていた、マスターの顔が。
笑うのを止めた。
「あいつには、それが許せなかったんだろうな。
あいつが苦しくてたまらない時に、俺がすっげぇ幸せだったこと。
・・・そう。
丁度、こんな時期だった。
2年前の、こんな時期」
それから先の話を聞くのが怖くて。
あたしは思わず、耳を覆った。
それに気がついたマスターは、あたしに優しく微笑みかける。
「聞きたくない??
聞きたくないなら・・・怖いなら、止めたほうがいい」
聞きたくない。
あたしの中のギンは、すごく最高な人で。
あたしはギンを愛してるから。
あたしの愛してるギン以外、見たくない。
・・・でも。
「・・・続けてください」
あたしは、ギンのすべてを知りたい。
マスターは、あたしから視線を逸らした。
暖かな光がこぼれる、窓の外を見る。