+Sariel+
「あいつ、俺の彼女をレイプしたんだ」
頭を、岩か何かでぶつけられた様だった。
何を言えばいいのか、分からない。
体全身から、汗がにじみ出て。
手や足が、小刻みに揺れた。
「彼女、自殺したよ。遺書残して。
俺が全部知ったのは、彼女が死んでから。
その遺書で、全部知った。
遺書には、あいつの名前は書いてなかったから。
あいつは警察沙汰にはならなかったけど。
・・・でも、俺は一発であいつだって分かった」
マスターは、右手で自分の頭を抑えた。
「俺、怒り狂って。
あいつを、本気で殺しかけた。
仲間が止めに入って。
結局俺はあいつを殺さなかったけどね。
その代わり・・・あいつの腕には、あの傷が残った」
・・・ギン。
心の中で、呟く。
どうして・・・。
お義父さんの、あの時の笑顔が過ぎった。
あたしをベットに押し倒して。
笑った時の、お義父さんの醜い笑顔。
・・・あたしがよく知ってるから。
親しい人に、そういうことをされるのが、どんなに辛いか。
あたしが一番、知ってるから。
ようやく、ギンがあの部屋で謝った理由が分かった。
きっと、あの部屋は・・・マスターの彼女のもの。
ギンは・・・あたしを重ね合わせていたんだ。
傷つけてしまった、その女の人と。