+Sariel+




でも、ギンは死んだ。



耐え切れなかったんだ。
自分がどれだけの人を傷つけたのか。

大切な友達を、どれだけ深く、傷つけたのか。

ようやく、分かったから。


「・・・君は、あいつにとって大切な人だったんだよね」

「え・・・」


「だってさ。初めてだったんだよ。
あいつがこの店に、誰かを連れてくるなんて」



・・・ギンにとって、あたしは何だったのかな??

今はもう、分からない。
答えてくれる、あなたがいないから。



・・・でも。

あたしが、ギンの存在に癒されていたように。


ギンも・・・あたしの傍にいることで癒されていたのなら。



それほど嬉しいことは、ない。




すべての傷を忘れて。
あたしといることで、あたしが感じたのと同じくらいの幸せを感じていてくれたのなら。





「・・・来てくれて、ありがとう。
あいつのすべてを、受け入れてくれてありがとう」




マスターが微笑んだ。
手の震えは、いつの間にかなくなっていて。
そっと、彼が手を離す。

まだ、今日が始まったばかりの時間。

涼しい朝。


あたしは今日、初めての笑顔を見せた。








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