halfway <短>
“シュンちゃん”と呼ぶ女の子は、いつだって彼だけを見つめていた。
彼女と私の瞳に映るものは同じなはずなのに、私達二人は、まるで正反対だった。
彼女は、物語のヒロイン。
私は、観客。
観客は、決して物語に触れることはできない。
そんなことを想ってしまうたびに、私の胸は、切なさの紐で締め付けられるように、少しだけ痛んだけれど、
それと同時に、彼を好きになった彼女に、暖かな気持ちも覚えたりした。
こんな風にして、私の日常は、少しの波と共に、それでも穏やかに過ぎていくはずだった。
近くて遠い彼の世界を、私の世界からこっそり見ているだけのつもりだった。
それなのに――
穏やかに揺れていたはずの波に、私は、突然呑み込まれてしまった。