halfway <短>
それは、いつもより薄暗い放課後だった。
昼過ぎから怪しくなった空から、小さな雨粒が、窓を叩き出した教室。
仄灯りに覆われた、閑散としたグラウンドから消えていく人影を確認しながら、
私は、どこまでも続く重たい雲を見上げて、これ以上、窓を叩く雨粒が大きくならないうちにと、教室を後にした。
そして私は、下駄箱まで辿り着いたところで、
いつだったか彼にもらった飴玉を忘れたことに気付いた。
あの日以来、ずっと制服のポケットにしまわれている飴玉を、
私は、毎日の日課のように、手にとっては眺めている。
そんな自分が急に恥ずかしくなって、私は慌てて、教室へと足早に戻った。
けれど、誰もいないはずの扉の中から、聞き慣れたふたつの声を聞いて、
私は、扉に掛けた手を、とっさに離した。
「――もういいっ!シュンちゃんのバカッ!」
それは仮に、耳を塞いだって簡単に聞こえてしまいそうなほど大きな声で響いて、
金縛りみたいに、私の体を動かなくさせた。
「おい、ミユ!ちょっと待てって――」
明るさだけがこもったいつもの彼とは違う、迫るような声色と同時に、
私の目の前にある扉は、ガラリと乱暴に開いた。