halfway <短>
「――ッ!」
勢いよく飛び出してきた彼女の行く手を塞ぐように立ちはだかる私に、
彼女は一瞬、目を見開いて立ち止まった。
けれど、涙で揺れる瞳を隠すように瞼を伏せて、すぐにまた走り去ってしまった。
私は何もできず、ただ、時が止まったかのように立ち尽くす。
そして、湿った空気の立ちこめる、陰暗とした教室の中には、
私に出くわした時の彼女と同じ顔をして、私を見つめる彼がいた。
「岡本さん……」
戸惑いの滲んだ彼の言葉で、真っ白になっていた私の時間は、また元通りに動き出す。
「えっと、あの……私、忘れ物を……」
言葉を発してみたら、思っていたよりも、動揺剥き出しの、情けない声をしていた。
見てはいけないものを見てしまった。
聞いてはいけないものを聞いてしまった。
出くわしてしまったこの状況を、まだちゃんと整理できていない私でも、
それだけは、しっかりと理解しているから。
「聞いちゃった……よな」
「……」
恐る恐る尋ねてくる彼に、私は何も言えずにいた。
「ごめん。なんか、格好悪いとこ見せちゃったな」
けれど、無理やり笑って、おどけて見せる彼の痛々しい姿を見て、
私の足は、無意識に、彼の元へと近付いていった。