halfway <短>
けれども、ひとつだけわかったことがある。
私は、自分でも驚くほど簡単に、嘘を付けてしまえる奴なんだってこと。
スルリと滑り落ちた、嘘。
――“そんなことないよ”
本当はそう言いたかったのに……
だって、私は知っている。
彼女だけに見せる、とびっきりの笑顔があることを。
彼女を呼ぶ声は、誰よりも愛しさに満ちているということを。
彼女を見つめる瞳は、優しさで溢れているということを――
彼にとって、彼女という存在は特別だ。
確かに彼は、誰にでも優しいけれど、
彼女以外には、誰にでも一緒の顔をするけれど……
あの子だけには、彼はいつだって特別だった。
それなのに私は――
どうして、そのことを伝えてあげられなかったのだろう。
彼を、傷付けてしまったのだろう。