halfway <短>
After love
昔、絵本で読んだ人魚姫を見て、ずっとバカみたいだって思ってた。
好きな人のために、自分を犠牲にして、泡になるなんて。
恋焦がれ続けた人を、誰かに譲るなんて。
だから思った。
本当は好きなんかじゃなかったんだって。
だって、本当に本当に好きなんだったら、どんな手段を使っても、何を犠牲にしたって、手に入れたいはずでしょ?って。
好きだからこそ、手放さなきゃいけない想いなんて、あるはずない。
絶対そうだって……
思ってたんだけどな。
だけど――
「好きな人に笑っていてほしい」
こんな単純な気持ちが、もしかして“愛”ってやつなのかもしれないな……
なんて、くだらないことを考えてる自分に、小さく笑って、
手の中で握り締めていた、少しだけ溶けかかった飴を、口の中に放り込んだ。
真っ白な袋の中に入っていた、小さな小さな丸い飴玉は、
太陽みたいに、真っ赤な色をしていた。
今度は私も、駆け出すような勇気を、宿せるような恋がしたい。
誰かじゃなくて、自分の手で、幸せにしてあげたいと思えるような、そんな愛を手に入れたい。
甘い甘いリンゴ味を、口の中で転がしながら、私はまた、少し笑った。
END.