halfway <短>
「……岡本さん?」
意識を自分の中に置いてしまっていた私を、彼は不思議そうに、もう一度名前を呼ぶ。
私は、そんな彼の声に気付いて、慌てて口を開いた。
「あ、えっと……」
まるで、彼のノートに話し掛けているかのように、相変わらず俯いたままで。
教室のざわめきに容易く迷い込んでしまいそうな声で。
うっとおしくなるような、おぼつかない説明で。
彼の質問に答えてくれる人なんて、この教室の中にいくらでもいるはずなのに……
これは、彼の隣の席という、幸運ゆえの特権なのだろうか。
「さっすが岡本さん!ありがと」
彼の元へ戻っていくノートを見送りながら、私は小さく頷く。
「はい。これ、お礼」
そう言って、私の傍に再び伸びてきた彼の大きな手の平には、小さな飴玉が乗っていた。