題 未 定


那奈の心配そうな顔をみると
ひいたはずの涙が
再び溢れてきた。

聞いて那奈。
あたし、だめだったよ。
きっと無理だった。
あたしが出来ることなんて
最初から無かったみたいに
終わっちゃったよ。



言葉にならない思いが
ひたすら涙となって流れた。


「あたしはずっと見てたから、葵が悩んでることも、一生懸命になってることも。頑張って頑張って一人の人をこんなにも大好きになれる人だから葵は、だからこんなに辛いんだね。

だけどね葵、尽くしたら尽くした分だけ返ってくるとは限らないの。人によって思いの受け止め方は違うからね。容量だって違うの。思いを少し受け取って満たされる人もいるし、満たされない人もいるよね。
愁斗君は葵でいっぱいだったよ。間違いないのそれは。なのになんで…。」


下唇を軽くかんで
あたしを見つめる那奈を
ぼうっと見ていた。
あたしと那奈以外のすべての世界が
まるであたしがいないかのように
過ぎ去ってゆくようだった。


「せめて愁斗に聞きたかった……。」

「だめだよ…葵。」

「……なぜ??あたしは少しでも頼って欲しいだけなのに。それさえも愁斗は許さないの自分を決して許さない…。」

「…やめて葵…聞いて傷付くのは葵自身だよ…。」

「いいのそんなのっ!!愁斗が抱える痛みなんかと比べればなんでもないよきっと!!」

「気付いてあげてよ葵…愁斗君は葵には話せないんだよ!!なぜだかわかる??」


あたしには、話せない…??

「愁斗君は葵を巻き込めなかったんだよ。何があったか分からないけど、葵と苦しみを分け合うことだけは出来なかった。なぜってだって……愁斗君は、葵が大好きなんだもん。」


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