題 未 定



急に高橋の顔が
見えなくなったと思ったら
あたしは
高橋の腕の中。


「葵…?」

「はい?」


めちゃ即答してしまうあたし。
ぷっと高橋が笑う。



「好きだよ。あおちゃん。ずっとずっと。なんかすげー幸せだ~!」

「んふふふふ。バカだね。高橋。」

高橋はたまに
こんな凄く嬉しい事を
言ってくれる。


「なんだよ~。」

今度はあたしが
クスッと笑う。

「あのね高橋は、幸せいっぱいのあたしの隣にいるから、幸せなの。なんであたしは幸せかって?だって高橋があたしを幸せいっぱいに包んでくれてるからだよ。」


高橋の腕の力が
強くなる。


「じゃあ、俺は俺を幸せにしてるんだなあ。」




あたしの唇より
少し上にある唇に
そっとキスをする。



「おやすみ高橋。」






あたしは
人生最大のミスを犯した。

気付く事だって出来ただろう。
あぁ。気付くべきだった。


彼の孤独を。
彼の後悔を。


彼を取り巻く
すべての悲しみを。


拭い去る事が
出来たはずなのに。






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