題 未 定
「あの~すみませ~ん。」
むせかえる程の花の匂いに
圧倒されながら
店の奥に声をかける。
「あら、いらっしゃいませ。」
奥から出てきたのは
ばあちゃん世代の
背の低い大人しそうな人。
「…あの…花をあげたいんですけど…。」
「プレゼントかな?」
「いや…知り合いが入院してて。」
色鮮やかな花に囲まれて
なんだか落ち着かなくて
ベタに頭をかいてみた。
「それは大変ねぇ。どんなのがいいかしら。ええっと……。」
おばあさんが花から花へ
ウロウロしているのを
眺めていると
急にこっちをクルリと向いた。
「このピンクの花と青い花とどっちがいい?」
淡いピンクの花と
深い青の花だった。
俺花とかわかんねーのに…。
「じゃあ青い方で…。」
「…そうね。そうしましょう。」
そう言ったおばあさんの顔は
少し悲しそうに見えた。
綺麗にくるまれた花を
受け取り俺は店を出た。