題 未 定



急に降りだした雨。
今だとばかりに
駅のロータリーは
タクシーでいっぱいになった。

家路を急ぐ人達の波にのまれながら
改札口へと急ぐ。
ただ、あなたに会いたくて。
なんだかよく分からないけれど
今彼に会わなければと
胸がザワつく。
いつものドキドキじゃない。
もっと大きな気持ちが
あたしの足を動かしている。



改札口の光が見えて
息を切らして立ち止まる
あたしの肩に
後ろからふわりと重みが被さる。



「高橋?」


改札口の光に照らされた
彼の影に問いかける。


「……俺……なんか…。」

熱をおびた腕にそっと触れる。
高橋が顔をうずめる私の首筋が
シトシトと濡れてゆく。



「…大丈夫だよ。」

あたしがいるじゃない。
あなたには
あたしが付いているじゃない。


「持ちきれない分は、あたしが半分持つよ?楽しい事だけ半分こなんてそんなの変じゃない。」


あなたの強さを知ってる。
誰より我慢強くて
誰よりも力強い。


でもたまに垣間見る
あなたの弱さも知ってるの。
本当は
誰より繊細で
誰よりも脆い。



傘を持っていない
左手で彼を抱き締めた。



「ほら…こうすると悲しみ伝わってくる。辛いね…。辛いよ。高橋が悲しいとあたしも悲しいの。」


彼の泣き顔をみたら
あたしきっと泣いてしまう。




< 69 / 105 >

この作品をシェア

pagetop