題 未 定
机のうえに
ずっと置いたままだった
白い封筒に手を伸ばした。
いい加減
逃げてばっかじゃ
だめだよな。
慎重に封を開けると
1枚の手紙が
綺麗に畳まれて入っていた。
『愁斗君へ
お久しぶりです。お久しぶりと言っても、あなたと最後に会ったときの事を、私は覚えていないのですが。なぜ覚えていないのか、と言うことさえも、最近まで私知らなかったのです。私は記憶を無くしてしまったから、あなたの顔も声も、どんな人かさえも、分からない。ただ一つ私が知っているのは、私はあなたを傷つけたのだという事。どうか会って話がしたいです。あなたと会いたいです。
佐々木 彩』
俺を…傷つけた?
会いたい?
どういう事だ。
テレビからは
ニュースキャスターの
明日の天気を報せる
作った声が響いていた。
『明日土曜日は午前中は雲もなく気持ちの良い天気となりますが、夕方から雲が広がり激しい雨が降るでしょう。傘をお忘れなく!』
携帯が光って
メール受信を知らせる。
葵からだ。
なんとなく気まずくなり
手紙を置いて
携帯を手にとった。
『もう家着いた?明日応援行くから、頑張ってね?』
明日出れるかわかんねーのに。
なんだよこの変な絵文字。
おもわずプッと
わらってしまった。
『さっき着いたよ。出れるかわかんねーけど応援よろしく!』
送信完了の文字を見つめる。
「やっぱ、こんなの良くないよな………。」
俺自身、隠し事をしてることに
相当罪悪感がある。
こんなんじゃダメだよな。
ちゃんとけじめ付けないと。
気持ちの整理もついてない。
だけど逃げたくなるんだ。
目を反らしたいけど
そうはさせてくれない現実。