題 未 定
「ねぇ、俺の字が違う…。」
えっ。えっえええ?ウソ!
「えっどこ?あっこうか!」
「ちゃうちゃう!」
「あれっ?こう!?」
あたしずっと
間違ってたんだ…。
「違う!ちょ貸してー。」
シャーペンを渡すとき
一瞬手が触れた。
不覚にもドキドキしてしまった自分が
少し恥ずかしかった。
「俺の字は…愁(うれ)えるの愁!」
「へ~どういう意味?」
高橋はまた風船を
プーと膨らまして、しばらくして答えた。
「心を痛めて嘆き悲しむ。心配すること?まあ要に、人の事に心を痛める優しさ?みたいなね?」
「へっ…へー。なんかいいね。」
自分の腕に顎を乗せて
窓の外を眺める高橋は
いつもよりなんだかとっても大人に見えて。
だけどなんだかすごく寂しい顔をしていた。
高橋はたまにこうやって
悲しい顔をする。
「あ、さっきごめんね。」
「あーうん。ちょっとショックだった~。」
「えっ?なんで?」
高橋の風船が音をたてて割れた。
高橋が目をパチクリさせる。
「なんでってそりゃ…名前とか普通…覚えてるもんだろーがよ~。」
高橋が口をとがらせていった。
う…上目使いカワイイ…。
って…え…?
「ちがくて!さっきうるさいって言ったじゃん…。」
…………………。
しばしの沈黙。
「ああ。おれ寝起きだったし。機嫌悪かった。」
…なーんだ。
なーんだ。
心のどっかで
密かな期待を……。
「…ふふーん。」