題 未 定


「まさくん。何ぼっとしてるの?由香の話聞いてる??」

俺の腕を強引に引っ張る
幼馴染みの由香は
なんだか最近妙に引っ付いてくるようになった。
どうせこないだ彼氏にふられたばっかだし
腹いせかなんかだろう。

しかしそんな事に使われる俺の身にもなってほしい。

俺だって、好きな人ぐらいいるし。


「えっ???そうなの!?」


あっまずった。
口に出してたし…。



「冗談ですよ冗談。」


「なーんだ。つまんない。でもまさくんって、女の子とか興味無さそう。」



冗談だったらどれだけいいか。



「はいはい。由香お嬢様の言う通りバス停までお送り致しましたよ。」

「それはご苦労。じゃあレッスンは8時に終わるから~」

「いや、帰りは勘弁。」

「どうしてっ?!夜道女の子一人で歩かせるの??薄情ものっ!!」


まず俺は片道30分かけていく
ピアノのレッスンの成果が
あれでは納得いかない。


そしてもう一つ。

この間、あの人に見られてしまった。
由香のバスに駆け寄る所。

あの人があの日消えていった
駅の方を見ると
驚くべき光景を目にした。

葵さんが……
ナンパされてる!!


「じゃあ由香もういくからねって…あれ??まさくんがいないっ!!」





とっさにキュッと掴んだ
彼女の手は
ひんやりと冷たかった。




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