題 未 定
「雅人くん……??」
少し困惑ぎみに
俺を見上げる彼女の目が
赤く潤んでいること
すぐに気がついた。
どうしよう。
泣いてたんだ…。
テストで悪い点でも
とっちゃったの??
友達とケンカでも
しちゃったの??
もしかして……
愁斗先輩と
なんかあったの??
ダメだダメだ。
きっとどれも葵さんを
困らせてしまう。
どうしたらいいんだろう。
思い切って抱き締めるとかっ!!
ダメだダメだ!!
まだ会って日も浅いし…
しかも俺なんかじゃなくて……
唇を噛み締めてうつ向く彼女に
こっちを向いてもらうのに
俺は必死だった。
「……これも落としましたよ。」
「えっ。」
再び手を掴んでそっと指を開かせる。
「お久しぶりです。」
彼女のてのひらに
ポケットから出した
キャンディを乗せた。
キャンディを包む小さな手は
彼女の口元で
声が漏れるのを
必死に押さえていた。
小さく震える彼女の肩に
恐る恐る手をかけると
彼女がピクンと動くのが分かって
我にかえった。
「ありがとう。」
「えっ。」
予想外の彼女の言葉に
思わず顔を覗きこんでしまった。
「あっ、すみません!!」
泣いてるとこ
見ちゃってすみません。
「優しいんだね。」
そういって
泣き顔で無理してはにかむ彼女は
少しおどけて言った。
「コーラのキャンディ好きなのあたし。」
「あ、俺もです。」
くしゃっと笑って
「ポッケに入ってる位だもんね。」
そう言った葵さんは
すごく悲しそうだった。