その赤薔薇を手折る時
ルインは静かに椅子を戻した。

荒れている。

すべてが、この空気さえも。

「すみませんでした。」

「ルイン、少し礼儀を教えてやる。」

さっきまでの困惑したアスカとちがって残酷な顔をしたアスカがそこにいた。

少しやりすぎたか?

ルインの動きがとまる。

「僕の命令は絶対だ。ルイン、手をだせ。」

さくっっ。

アスカがルインの手の甲をペンナイフで切りつけた。

赤い血がしたたる。

だが、ルインは顔色一つかえず平然としている。

「この痛みにかえ誓え。僕を守ると。」

「はい」

「死ぬまで」

「そのつもりです」

ペンナイフについた血を舌でなめとるアスカは子供ではなかった。

悪魔のような、美しい一本の赤薔薇。

やはり貴方は赤薔薇が似合います。



「絶対だな」


「はい、主人様。我が命に代えても。」


赤薔薇よ。
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