その赤薔薇を手折る時
怒りのあまりアスカはルインの手をたたきはらった。
かわいた音がなる。
ルインは叩かれた手を押さえ、呆れた顔をした。
痛みなどまったく動じないらしい。
「ご自身の言葉に責任をおもちなさい。誰かの発言に流され意志を変えるなど、ボード家後継ぎにあるまじき行為です。」
「・・・・。」
「もう坊ちゃんは15歳なのです。自分に責任がとれる年であった身で、人に責任をなすりつけるなど・・・・。」
「・・・・うるさい」
「・・・では、アルファートを雇ったのは自身の意志というのですね?」
ルインはニッコリと嫌味な笑みを浮かべアスカの顔を覗き見た。
罰が悪そうな叱られた子供のような顔をしたアスカが頷く。
「ふっ、いい子ですね。」
ルインはアスカの頭をなでて暖炉に向かった。
火かき棒で暖炉を探る。
火をつけようと視線を落としたとき、なにかが目にとまった。
灰でよごれた封筒。
真っ赤な印の招待状。
アスカが暖炉に入れそこなった物だろう。