その赤薔薇を手折る時

「わかった。」


「では、お休みの準備をしておきます」


ルインは一礼をして部屋から出て行った。




のこされたアスカはボーっと椅子に座ったまま動かない。


机の上を見つめて考え事をしているようだ。


黒く静かな部屋がいっそうコジンマリして見える。


「・・・診察・・・・か」



ボソッとアスカは呟き瞼を閉じた。



目を閉じれば見えてくる。



そう、あの日の記憶が。

心の奥に染み付いて消えない記憶が。


たぶん死ぬまで消えることはないのだろう。重く心に詰まっている過去は、どんなに目をそらしても変わることがない。



僕なんだ。




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