その赤薔薇を手折る時
{健康診断・・・町で主人の服をしたてる・・バイオリンの練習・・庭のていれ・・}
今日の段取りだ。
すべてキッチリとやり遂げるのが執事の仕事であり、失敗は許されない。
というか、ゆるせない。ルイン自身、予定はちゃんと守ことが生きがいであるうえ、時間などが狂ってしまうとイライラするたちなのだ。
「この少年は誰かな?見たところアスカ君じぁなさそうだね」
老人は一つの絵の前でメガネを押し上げた。
一本の赤い薔薇をもって真正面を向いている少年。
背景は白色一色でシンプルに仕上げてある。
アスカとは違う、緑の目。
アスカにはできない優しい微笑み。
アスカが嫌いな赤薔薇。
「さぁ、絵の人物など坊ちゃんに尋ねたことがないもので」
ルインも不思議そうに絵を見つめた。そもそも少年が描かれた作品なんて屋敷の中に飾られている物のなかでも珍しいほうなのだ。
「ご親戚の方ですかね・・・?」