その赤薔薇を手折る時



「僕の兄だ」



二人はハッとして顔を上げた。

階段の一番上に声の主である、アスカが腕を組んでたっていた。

怒っても、笑ってもいない無表情。

眠そうな顔といってもいいぐらいボンヤリしている。




「坊ちゃま、お目覚めになりましたか。」


ルインはニッコリ笑って言った。


そんなルインに「なぜ起こしにこなかったんだ」と愚痴を言うのもできないぐらい眠いらしく、アスカはただ「ああ」とつぶやいた。



「アスカ君!久し振りだねぇ、おや?少し背が伸びたのかい」



老人は笑顔で話かけ、階段を上っていった。


「・・・・伸びたことには伸びた。」


アスカは欠伸をかみしめ老人と抱き合った。


まるで、祖父と孫の関係のようだ。


そんな二人の姿を後ろからルインは優しく見守っていた。




「なんだか髪ものびたような・・・」



抱き合った手を放し、アスカをよく見ようと老人は半歩下がる。


「・・・・伸びたらいけないのか」



うざったそうにアスカが言い捨てる。


成長期のアスカは身長の伸びも早い。


とくに15歳という年齢なだけあって、少し見ないうちの成長は目まぐるしく速かった。
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