その赤薔薇を手折る時
「誕生日に出向けなくて、すまなかったね」
老人は丸メガネの奥にある瞳を光らせた。
こんな子供が大人になる。
こんな幼い少年が成人になる。
人の上に立つ者となっていく。
そう考えると、一年という期間を刻む誕生日は実に大切なことだ。
「かまわん、だいたい僕の誕生日などロクなことがない。」
アスカは横目で執事を見据えた。
「もっとましな祝い方をしてもらいたいものだ」
ルインはアスカの視線に笑顔で応じる。
「そろそろお時間です。診察と参りましょうか。」