その赤薔薇を手折る時
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アスカの部屋には診察器具がならべられ、まるで医務室のようだった。
この器具はすべてルインがそろえたもので、水盆やピンセット類はボーン家じきじきの紋章入りである。
「では、まず聴診器あてるとするか」
老人は持参のバックを開け中を探りはじめた。
老人の後ろ姿を見ながらアスカはネクタイを外す。
緑のネクタイをルインに手渡し、椅子に座った。
「で?なんでこの時期に診察なんだ?」
アスカは首元のフックを指で外し問う。
聴診器を首に下げた姿で老人は振り向いた。
「ああ、薬がきれる頃だと思ってね」
ルインの眉がピクリと動く。
「薬?」
老人はコックリと頷き、椅子を引きずってアスカの元に移動した。
鉄で出来た回る椅子だ。
「執事君に話してないのかね?」
関心しないな、と老人が顔をしかめる。
そんな態度にもアスカは動じないで、顔をそむけた。
「話す必要などないからな」