その赤薔薇を手折る時
「叔母様から執事として雇われた身です。」


男の吐息が耳にかかる。
王子の反応がないのを不審に、男は身を引いた。

バサッ!!っつ!!

王子は男の胸倉をつかみ押しかえした。

男の手から薔薇が落ちていく。

「おまえっ」

グシャリ!!!

アスカは落ちた薔薇を足でふみつぶした。

綺麗だった赤薔薇が潰れていくさまを男は黙ってみつめる。

大理石の床に、薔薇の踏まれた後が赤い滴でのこっていく。
踊っていた沢山の人々もひぜん動きを止めていく。

「僕は・・・」

王子はゆっくり顔を上げ男をみすえた。

綺麗なルビーの目と男のグレーの目が合わさったとき、王子の口が開く。


「赤薔薇はすきじゃない。」

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