その赤薔薇を手折る時


「とすると・・・・」



アスカの体に聴診器をあてながら老人が口を開く。


「君はまだ、あのことも言ってないわけだね?」



「当たり前のことを聞くな、クラウス」


アスカがヒヤッとした感触に体を震わせながら答える。


「言えるわけないだろ」



聴診器を離し、クラウスはくすっと微笑んだ。



「もう少し力を抜いて人と接してみなさいな」





「・・・・うるさい」






「君は、いつもそうだ。秘密、言えない、言わない。こればっかりじゃないか」



やれやれと、クラウスは手を振る。





「・・・・人に話せるほど、僕の過去は軽いものじゃない!」





アスカは拳をきつく握りしめた。

かたい拳が小さく揺れ動く。




「軽いものじゃないんだ・・・・。」
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