その赤薔薇を手折る時
「しかし、変わりにこれからは私が毎晩ご本を読み聞かせしてさしあげましょう」
「子供扱いするなぁぁぁぁぁあああ!!!」
アスカとルインの喧嘩をクラウスは微笑ましく見守っていた。
「では、また診察に来るよアスカ君」
迎えの車の前でアスカはクラウスの見送りをした。
「ああ、また頼む」
「こんどはお茶にでもいらしてくださいね?」
ルインが傘をアスカに差しかけながら言った。
「そうしたいねぇ」
クラウスはフッと笑い車に乗り込んだ。
「アスカ君の成長を楽しみにしているよ!」
車のドアを閉めようとクラウスが手を伸ばした。
だが、その手をルインが素早くつかむ。
「!」
「坊ちゃんの薬、あれはなんの薬なんですか?」
クラウスの耳元に口を近づけルインが言う。
アスカには傘が邪魔して姿が見れないようになっていた。
「ふっ、やはり気になるのかね?」
「主人を守るのが執事の務めですから。」
「・・・あれは、解熱剤だよ」
「そうですか」
「アスカ君はよく熱を出すからねぇ」
ルインはすっと手を離し、クラウスの目を見つめた。
「桃色をした解熱剤など初めて知りました。」