その赤薔薇を手折る時
鳥の囁き
パーティー会場が一気に凍りゆく。

王子の目は殺気にみち、だれも声がかけられない。
一人をのぞいては・・・。

「これは、ご無礼をもうしました。」

男は床に散らばった花びらをひろい集め、笑顔で立ち上がる。

「それなら、これから庭の薔薇も削除しなければいけませんね?」

「削除?」

男の言葉に不審を感じた貴婦人が声をかけた。
美しく白いドレスの婦人は大手フランス料理家の婦人だ。

「あなた、何様ですの?」

「はい?」

男は笑顔のまま振り向く。

「ここはボート家の屋敷、あなたが問い詰めていたのはボート家じきじきの跡取り、アスカ・セハロン・ボート様です。なにゆえ貴方のようなものがここに?」


「私ですか?」


男は白い手袋をはめたまま婦人の手をとり口づけをした。

婦人の顔がピンク色にそまっていく。

「なっ!」

「私は、アスカ様の専用執事でございます。マダム。」


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