その赤薔薇を手折る時


*****



「さて、坊ちゃん。予定を変更いたしまして、バイオリンの稽古といたしましょうか」



綺麗にたい上げられたパスタ皿をワゴンにのせ、ルインが言った。


外の雨は酷くなるばかりで一向に止む気配がない。

これでは満足に街で買い物もできまい。




「しかたない」



食後の紅茶をすすり、アスカが同意した。



「だが、今だに理解ができないな。何故バイオリンなど弾けなくてはならないのだ?」


不満そうな顔でルインの背中を睨む。


「人に聴かせるわけでもないのに。」



「あぁ」



ルインの手がポットに伸びかけて止まった。

美しい黒髪が目にかかる。



「それならばいい考えがございます。」







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