その赤薔薇を手折る時
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「さて、坊ちゃん。予定を変更いたしまして、バイオリンの稽古といたしましょうか」
綺麗にたい上げられたパスタ皿をワゴンにのせ、ルインが言った。
外の雨は酷くなるばかりで一向に止む気配がない。
これでは満足に街で買い物もできまい。
「しかたない」
食後の紅茶をすすり、アスカが同意した。
「だが、今だに理解ができないな。何故バイオリンなど弾けなくてはならないのだ?」
不満そうな顔でルインの背中を睨む。
「人に聴かせるわけでもないのに。」
「あぁ」
ルインの手がポットに伸びかけて止まった。
美しい黒髪が目にかかる。
「それならばいい考えがございます。」