その赤薔薇を手折る時


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女という者は、どうもセッカチで見栄を張りたい生き物らしい。


例えばここに手作りのクッキーがあったとする。

なんの変哲もない、ただのクッキーだ。


男はそれを包み紙のまま平気で手渡す。



だが、女はそれを。



金の皿に並べて見せる。








「ねぇ、ちゃんと招待状をだしてくれたぁ?」


サーモンピンク色のドレスに身を包んだ女が鏡の前で口紅をつけている。


真っ赤な紅で、ドレスの色と喧嘩しそうだ。


「あぁ、出したよ。」


そんな女の後ろで、微笑みながら新聞をめくる美男がいた。


どこか見たことのあるような面影のある美男だ。



「ちゃんとね」



女の口が、鏡の中で横の伸びる。


とびきりの笑顔。




「うれしい!」



女は猫なで声で囁いた。



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