その赤薔薇を手折る時

ルインは真剣そのもので言葉を続ける。

その顔に笑顔はなかった。



「私は心よりこの会社を守りたいと思っております。しかし、今のままじゃ我が社は型にはまった三流者・・・籠のトリでございます。」



「さ・・・三流だとっ!!」



アスカはムッとしてルインの胸倉につかみかかった。



「坊ちゃん・・・」


「取り消せ!!」


怒りで歪んだアスカの顔。

少し潤んだ目。

唇をかみしめた白い歯。


やはり主人はまだまだ子供だ。

怒りを感情のままぶつけるしかない。

ただの。

子供。



ルインの口元が緩んだ。

ふっと息がアスカの顔にかかる。



「悔しいですか?」


「・・・・」



そっとルインの手が伸びて、アスカの目元に触れた。


ポロっと光る滴が落ちる。


その雫は光に輝き、
真っ黒いカーペットを濡らした。






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