その赤薔薇を手折る時
主人とは言え、15歳の子供がいる部屋とは思えない広すぎる部屋だ。

家具や置物まで黒の統一。
まるで人のいない家具だけの部屋のようだ。

窓から見える景色は隣村の共同墓地で、子供らしくない環境。

そんな部屋がアスカの部屋だった。

「まず言っておく。」

アスカは部屋にはいるなりカーテンをすべて開いた。

「僕は執事をもったことが一度もない。」


「そうでしたか」

「次に、」

アスカは自分専用の椅子に座り込み男に背をむけた。

男は手袋をはずし椅子の横に立つ。

「おまえと僕は、主人と執事の関係だ。」

「心えておりますよ。」


「僕に嘘は絶対つくな」

「はい」

「・・・・。」


アスカは窓の外に目を向けだまりこむ。
安心か不安か。

この男を信じるか。

疑うか。

「アスカ様、私の名はルインともうします。」


夜の墓地は美しい。

なにもない黒一色だ。

「ルイン」

「はい。ご主人様」


「どうしていつも笑っていられる?」

「そうですね。心の器が大きいからですかね?」

ルインはくすっと笑いアスカを見た。

子供のような質問だ。

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