専業主婦生活<その2>
テーブルの食器をキッチンへ運んで、とりあえず流し台に置くと典子は、寝室に戻ってクローゼットからスーツを二着取り出すと、洗面所にいる大輔に見せに行った。

「ねぇ、今日はどっち?紺?グレー?」

髭を剃りながら大輔は、あごで左を指した。典子の右手にある紺のスーツだった。

「紺ね?了解。」

そう言うと典子はグレーのスーツをクローゼットに戻し、紺のスーツを手にベランダに出て、軽くブラシをかけ始めた。

別にホコリはついていないのだが、一応、何かしてあげたいという気持ちから始めた儀式のようなものだった。

そして、スーツを寝室のクローゼットのドアにかけると、靴下と下着を出してからリビングに戻った。

ワイシャツやネクタイ、ハンカチは、大輔が自分で好きなものを選ぶので余計な事はしないことにしている。

ここまでを終えてから、典子はようやくキッチンで洗い物を始めるのである。和食の場合は、お皿の数が若干多いし、魚を焼いたコンロがクセモノだがそれでもたった二人分である。手馴れた典子には大した時間は必要ない。

あっという洗って、流し台もついでに綺麗に磨く。コンロ周りも丁寧に拭いて、台布巾を綺麗に洗い終わった頃に大輔の準備も整ったようだった。

玄関に大輔を見送りに出た。

「はい。気をつけて。今日も頑張ってね。」

そう言って、カバンを手渡した。

「はいよ。」

にこっと笑って大輔は仕事に出かけた。

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