専業主婦生活<その2>
ただ、典子にとっての「生活」は
「家」そのものなのである。

毎朝、きちんと手作りの朝ご飯を
ゆっくりと食べて、気持ちのいい空間を
少しずつ作り上げて、安らげる場所を
維持することがとても大切に思えるのだ。

実際、典子が働いていた時には
自分も出かける準備をしなくてはならず
朝ご飯を「ゆっくり」した気分で
食べることなどできやしない。

大輔にもさっさと食べてもらわないと
後片付けをして出かける時間がなくなるし、
大輔の事を思いやる気持ちを持つ余裕も
当然持てなかった。

それが、今では、朝食を食べる様子で
大輔の健康状態もわかるし、
昨日の出来事を聞くことで精神状態も
なんとなくわかったりする。

典子自身、別にイライラする必要がなく
落ち着いた気持ちで接することができるのだ。

そうなると‥大輔もゆったりした気持ちで
会社に向かうことができるようなのである。

もちろん、これは典子の単なる自己満足かも
しれないのだが、それでも以前よりずっと
大輔に対して「優しく」なれた事は
間違いない事実なのだ。

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