櫻吹雪
理由なんてない。


だけどイライラする。

悲しくなる。


認められたい──。


だから殴る。

だから勝ちたいと思う。



誰でもいいから

俺を見てくれ。




「ねえお兄さんお兄さん!」

ヒ「…?」

「なんかさー
スッゴいイライラしてるみたいだけど

コレ使ってスカッとしない??

人生ヤなこと多いよね〜」


二個上くらいのチャラい男。

視線が定まってない。

呂律もうまく回っていない。


…クスリか。



ヒ「……消えろ」


ガンッ!!!


ドスッ!!



こっちの方が

全然スカッとするんだよ。



サー…

暗くなると急に

雨が降ってきた。


動かなくなったソイツの上から俺はおりて


静かに上を向いた。



涙は出ていない。

なのに頬に水が伝う。

血で濡れた手は

静かに洗い流される。



…寂しくなんかない。


俺は濡れたまま


男のポケットを探るとたくさんのクスリが出てきた。



…やるか?


…いや、やらない。



だけど自分のポケットに入れて持ち帰った。



雨に濡れた俺の体は冷たくて。


心まで冷たくなっていく気がした。




暗い、暗い暗い。


何も見えない。




もう何日帰ってない?

何日食ってない?



…まあいいや。


何を考えるのもめんどくせぇ。



踊る気にもなれない。


帰る場所は…


あるけどない。


俺の足はどこに進んでる?


暗闇で何も見えないのに


どこに向かって歩いてるんだろう。



力尽きて公園で倒れ込んだ。


何がなんだか、もう分からない。



ポケットの中にある物を握りしめて



暗闇の中、眠りについた。
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