櫻吹雪
あれから数日。


ドンッ ドンッ


俺は今
隣町にストリートダンスをしに来ていた。


一緒に踊ったやつはそれだけで仲間。


言葉はいらなかった。


ただ踊っている時だけが何もかも忘れられて、純粋に楽しかったんだ。


人を殴っているときに感じるのが優越感なら


踊っているときに感じるのが快楽。


ただ楽しくて楽しくて
仕方なかった。


一生、ここにいたかった。


初めてダンスを見たのは街の祭りのパレード。



小さい頃だから記憶は全然残っていないけど、


その時のことだけはハッキリと覚えてる。


道路に人がたくさんでてきて

そして鳴り響く爆音。

軽いダンス曲が流れて


早い動きで一気に踊り出す。


純粋に“カッコいい”
そう感じた。



俺もいつかあんな風に…。

そう思っていた。


ダンスは俺が認められる唯一の場所で。


今だって俺は

ダンスが好きで好きで仕方ないんだ。


俺にダンスをとったら何も残らない。


ドンッ ドンッ

〜〜〜〜♪♪♪

闇夜の中、

激しいヒップホップ曲と共に踊り出す。


─────────…

風呂と着替えと金をとりに一時帰宅。


ガチャン

タオルをとりにリビングに入った。




母「……………」

父「……………」


父親も母親も完全無視


母親は朝食を作る作業を止めないし
父親はテレビから一切目を離さない。



だから俺もそのまま引き出しからタオルをとってリビングを出ようとした時。



ガチャッ

「…兄さん!帰ってたんだ!」


ヒ「……雅也(ユウヤ)」

優秀な、俺の弟。


雅「心配してたんだよ?ずっと…」

雅也は俺の耳元で言った。



雅「俺に負けてやつれちゃったんじゃないか、って」



ヒ「……………」


母「雅也おはよう!
はやくご飯食べなさい!」

父「今日も勉強頑張ってくるんだぞ!」


雅「うん!ありがとう!」
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