櫻吹雪
俺が出て雅也がリビングに入ると

一気に雰囲気が明るくなった。


まるで普通の家庭のように。



俺がいなくなれば

家族は笑う。



俺はさっさと風呂に入って
着替えをして
髪型をしっかり整え
携帯の充電器と金を持って
家を出た。



まだ朝だから
何をすればいいかも分からない。




青すぎる空と

眩しすぎる太陽がイヤになる。



『俺に負けてやつれちゃったんじゃないか、って』



名門校に通う弟との差。単に自分の努力が足りなかっただけだってことは分かってる。



『ゆうくん凄いわ!』
『雅也よくやったな』



…本当はさ


俺もただそうやって


頭を撫でてほしかっただけなんだよ。




急に何も見えなくなった。


どうした?


自分でも分からない。


ただ目の前が暗くて


孤独で



そっか、俺

いらないんだ。



もうなんか





どうでもいいや。



意図的にポケットに入れておいた

白い粉の入った包み紙を握った。



さあ、これからどうしよう?




─────────…
隣町の名門校の前。




ここまで来たはいいけど…。


俺ちゃんとやれんのかな。

バレたら刑務所か。



…俺は必要ないんだから…

それでもいいか。




しばらくすると、昼休みなのか数人の女子が歩いてきた。


真ん中には髪を掴まれてる…

いかにもいじめられっ子。


俺は静かにフェンス越しに近づいた。
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