櫻吹雪
────────…


女子って怖いなぁー…


それにしてもいじめられっ子は泣かなかった。


むしろ自分をいじめてる奴らを見下すかのような目で見ていた。




なんだアイツ。


…アイツにしよう。



俺はフェンスを乗り越え、スカートの埃をはらう彼女に近づいた。



ヒ「…めんどくさそうだな」

「……誰ですか」

強い目で俺を見た。



ヒ「…お前には特別にタダでやるよ」



俺はそう言って
彼女に一袋渡した。


焦っている彼女に有無を言わさず無理矢理握らせ、俺はフェンスを登って出て行った。



振り返りはしなかったけど

背中に彼女の視線を感じた。




…なんで金をとらなかった…?


あの目を前にして

俺は動くことが出来なかった…。



金を出せということが出来なかった。


結局俺は

何をやっても中途半端か…。



─────────…


歩いていた。

ただ何も考えず。

変わっていく景色を

ぼんやり眺めてた。


その間に、街は闇に包まれていた。



───ザワザワ…

「また自殺だって」

「最近の子は…」


───ザワザワ…

「何それうざー!」

「ほんとあのブス!」




人波は冷たい。

会話なんてもっと冷たい。

この世界は、冷たい。




冷たい。
寒い。



凍りついた心の中で、ふと思い出したのはあのラーメン屋だった。



笑う家族。暖かすぎる場所。



…住所は、覚えていない。


お礼…持ってけないなあ…。



……。



俺は立ち上がって

夜の駅辺りをうろついた。



何も聞こえない。

聞きたくない。
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