ごめんね、ありがとう…先生
それから春美は沙依を見ていた。



無理をせず、時々同じ姿勢で時々先生と生徒の関係になっていた。









「焦っていたのかな…。焦る必要なんてどこにもないのに」

















それに気付いた翌日。
春美は沙依のところに来た。



「あの、香山さん」
「何?石川さん」
「私ね、伊能先生にも振られちゃった。これから先、ずっと付き合ってても生徒と先生の関係を越えることはないって言われたの。それでも最初は『諦めてたまるか』って思ってた。
だけど、香山さんを見てると無理をせずに、まるでお互いを尊重しているみたいで……。伊能先生が言ってたことってこういうことなんだなって思った」





春美は目に涙を浮かべていた。

「だから……。絶対に伊能先生のこと諦めないでね」
「もちろん」












今までだってたくさんの失恋があった。だけど、ここまで涙したことなんてなかった。


春美は涙が止まらなくなっていた。


















本当に本気だった。本気で伊能先生が好きだった。
だけど、沙依ばかり見ていた春美に幸せは訪れなかったんだ。

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