夜の蝶−麗蝶−
私たちは別に付き合っているわけではない。
かと言って、私は隼人のセフレでもない。
隼人が去った後、色々な男に指名され、その度に『不細工な男』『気持ち悪い笑顔』そんな風に思いながら接客していた。
私がこんな風に思うようになってしまったのも、全てあの男のせいだろう。
お店が終わり、私は着替えてすぐに家に帰った。
私の仕事はキャバクラ。
私のお店も隼人のお店と同じくらい有名な『夜蝶』というお店。
私はそこのNo.1。
まぁ、私も有名だね。
−ピーンポーン
静かな家の中に、インターホンの音が鳴り響いき、ドアを開けるとすぐに抱きつかれた。
「愛に早く会いたかった…客なんて嫌だ…」
「はぁ…早く中に入りなよ」
「うん」
隼人のために、私が今日食べていた夕食の残りを温めた。
「あのさ、前から気になってたんだけど、隼人彼女とかいないの?」
「なんで?」
ご飯をテーブルに運ぶと、隼人は嬉しそうに食べ始めた。
「いや、毎日のように私の所きてたら、彼女に迷惑じゃん?」
「大丈夫だよ、彼女なんていないから」
絶対モテるはずなのに…。
「それに俺、好きな人いるし」
−ズキンッ
胸が痛む…。
何で隼人の言葉で胸が痛むかって?
それは、私が隼人のことを好きになってしまったから…。
馬鹿だよね、ホストを本気で好きになるなんて。
「そうなんだ」
そう言って立とうとしたとき、腕を引かれ抱きしめられた。
「俺好きな人、いるんだよ?」
「だ、だから?」
「…気にならないの?」
気になるよ?気になるけど…
「別に…」
私は素直じゃないから、素直に『気になる』なんて言えない。
「はぁ…素直じゃないなぁ」
そう言いながら私を離した。
それが少し残念に思ってしまう。