私、婚活します!
その気持ちに戸惑い、咲子はコホンと小さく咳払いをし、ごまかす。
「あ、今『僕』って言った」
アメリカンコーヒーを飲んでいた彼は、あっ、と笑う。
「すみません。プライベートモードになってました」
「いいえ。構いませんよ」
少しずつ打ち解けた咲子も、ダージリンティーを飲みながら微笑む。
伏し目で微笑む咲子を、高藤は、カップに口をつけながら真剣な目差しで見つめる。
「失礼ですが……お名前と、年齢も聞いてよろしいですか?」
「あっ、すみません……私ったら」
急いで名刺を出し、自己紹介をする。
「竹内咲子、25歳です」
「おお……あの有名な化粧品会社なんですね」
「デパートの販売員ですけどね」
ふふふと笑う咲子に、高藤も目を細める。
「うちの雑誌にも、取り上げさせていただいてますね」
「そうですね。だから、いつも読んでるんです」
咲子の凜とした態度に、高藤は一瞬目を見開く。
「やっぱり、貴女はうちの雑誌にぴったりですね」
咲子は、ハンカチで口元を隠し、首を傾げる。
「前に1度だけ、スカウトというか、声を掛けた方がいまして……。その方は、雑誌の名前を聞いた途端、アピールしまくりって感じで」
何かを思い出し、あははと笑う。
「我々の雑誌は、上品で、高貴なコンセプトでやってるんです。だから、名前がnobilityなんですけどね」
そして、高藤はカップを置いた。
「だから……貴女を見て、声を掛けてしまった」
少し低くなった声に、薄く笑った口元に、咲子を見つめる瞳に、また咲子の胸は、トクンと音をたてた。