私、婚活します!


その気持ちに戸惑い、咲子はコホンと小さく咳払いをし、ごまかす。


「あ、今『僕』って言った」


アメリカンコーヒーを飲んでいた彼は、あっ、と笑う。


「すみません。プライベートモードになってました」


「いいえ。構いませんよ」


少しずつ打ち解けた咲子も、ダージリンティーを飲みながら微笑む。


伏し目で微笑む咲子を、高藤は、カップに口をつけながら真剣な目差しで見つめる。







「失礼ですが……お名前と、年齢も聞いてよろしいですか?」


「あっ、すみません……私ったら」


急いで名刺を出し、自己紹介をする。


「竹内咲子、25歳です」


「おお……あの有名な化粧品会社なんですね」


「デパートの販売員ですけどね」


ふふふと笑う咲子に、高藤も目を細める。


「うちの雑誌にも、取り上げさせていただいてますね」


「そうですね。だから、いつも読んでるんです」


咲子の凜とした態度に、高藤は一瞬目を見開く。


「やっぱり、貴女はうちの雑誌にぴったりですね」


咲子は、ハンカチで口元を隠し、首を傾げる。


「前に1度だけ、スカウトというか、声を掛けた方がいまして……。その方は、雑誌の名前を聞いた途端、アピールしまくりって感じで」


何かを思い出し、あははと笑う。


「我々の雑誌は、上品で、高貴なコンセプトでやってるんです。だから、名前がnobilityなんですけどね」


そして、高藤はカップを置いた。


「だから……貴女を見て、声を掛けてしまった」


少し低くなった声に、薄く笑った口元に、咲子を見つめる瞳に、また咲子の胸は、トクンと音をたてた。



< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop