*title*未定*
【こちら きまぐれ放送局】
少女は満足気に手元の香水壜を眺めていた。
中には昨日摘んだ“青の薔薇”で作らせたオイルが入っている。
澄んだ青と沈んだ青。
ラベルには
【血の気のない白ウサギの青】
と書かれている。
リジーはその小さな香水壜を忌々しげに睨み付けた。
あの日、少女は沢山の、本当に沢山の…部屋中に敷き詰めてもまだ余る程の…温室中に咲き誇っていたすべての“青の薔薇”を摘み取り、そしてそれらすべてを使って、あの小さな香水壜に入れるオイルを作ったのだった。
あの素晴らしい“青の薔薇”は、手のひらに収まるぐらいの小さな小さな香水壜に閉じ込められてしまった。
温室番はショックのあまりに寝込んでしまっている。
少女は、そんな温室番の様子を知ってか知らずか、のほほんと満足気に香水壜を眺めるばかりだ。
コトリ、小さく音を立てて香水壜はラジオの傍らに置かれた。
今日もラジオは意味の有無が分からない言葉を連ねた放送を淡々と流し、時折入るノイズがリズムを与えている。
ふ、と。
リジーが鼻をひくりと動かした。
長い耳がラジオの音を拾おうと向きを変える。
「ねぇ、」
「なに。」
「声が聞こえる。」
「ラジオだもの。」