無慈悲な水の記憶
「有り得ねぇッ!!!」
宵月と別れて
彰と部室へ向かう。
今日は部活は休みだが
例の咲斗先輩に
お祝いの報告をするため
足早に部活へと向かう俺と彰。
「いきなり叫ばないでよ」
「あッ〜あの女有り得ねぇ!!
なんなんだよッ
俺にばっか突っ掛かって来やがってッ
入学当日もそうだったぜッ
入学早々あんな女子に声かけられたことに
物凄く後悔を感じるぜ…」
大きなため息を漏らす
「幸せなため息は
腹立たしいだけだからやめてくれないか、絢凪」
悪戯に笑う彰
「あっ、初めて笑った」
「…何が」
「えッだから、彰が初めて笑ったッ」
「…それ嫌味?
って前々から言いたかったをだけど
下の名前でなんで呼んでるんだよ…」
呆れながらも
決して怒りはしない彰を
少しちゃかしてみた
「なんだなんだ〜
彰が笑ったのは、
やっと俺のことを
受け入れてくれたってことか〜っ
くぅッ嬉し過ぎるぜ、親友なる友よッ」
「僕たちそんな親しい関係じゃ
なかった気がするんだけど」
「そんなん関係ねぇーよッ
これから築き上げていけばいいだけの話だろ?」
しっかり
彰の目を真っ直ぐに見つめた。
「……ふんッ好きにすればいいよッ」
一旦間を置いて
直ぐ様返事をすると外方を向き
そう吐き捨てた。
夕日に照らされた横顔に
微かに微笑む彰が見えた。
「んじゃこれから俺の親友なッ
ってことでこれからは
俺のことは下の名前で呼ぶことッ
あっ…これ強制的なッ」
にっと無邪気に笑いかけると
一度こちらを向き
ふんっと意地を張る彰。
堅かった表情からふと笑みを浮かべた。
「…馨」
夕日に照らされた俺達の背中は
遠く輝く光に導かれ
微笑む横顔だけがなんだか眩しかった。