無慈悲な水の記憶
あれから一年前の
高校一年の春
「絢凪馨(アヤナギ カオル)
趣味は、絵を描くことと演技をすること。
座右の銘は努力に勝るもの無し。
…よろしくお願いしますッ」
高校入学初めての生活
希望していた学校もすんなり入れ
勉強が大の苦手だった俺ですら
高校入学となれば
ワクワクが止まらない。
高校に入学したら
絶対平凡な高校生活を送るッ
これが俺の夢。
必ずしも
平凡な一般的な高校生活を送ってやるッ。
そう思ってた矢先、
半信半疑に俺は耳を疑った。
「っ!!!
お、俺が演劇部に、ですかッ!?」
まず俺の高校生活を
一変させるかのように
部活への入隊を誘ってきた、
幼なじみで2つ先輩の
神楽坂咲斗(カグラザカ サクト)。
「おぅ馨ッ
俺達の演劇部に入ってみねぇーかッ
お前、演技すること昔から好きだっただろ?
俺の部入ってもすんげー
損させねぇ自信あるからさッ」
自信満々にそう言い放った咲斗先輩。
肩まで伸びている髪を
一つに束ね横で結び、
前髪には何個か赤やオレンジのピンを留めている。
「いや、でも俺、部活はちょっと…」
部活なんかに入っちまったら
俺の理想の平凡な高校生活は
夢の夢のまた夢の夢になっちまうッ
それに演技は好きで
中学の頃も一応
演劇部の部長としてやってきた。
だがしかし、だ。
俺はそんな忙しい中学生活を
送ってきたからこそ、
高校生活はEnjoyしたいんだッ
不可能を可能にする為ッ
努力に勝るもの無しッ
「おーい、馨ーッ
お前何ぼーと1人でつっ立ってんだよッ?
部長、神楽坂の直々の命で
馨を今から正式に
演劇部の部員にしてやるッ
ほら、行くぞッ」
「ちょっ!?咲斗先輩ッ
だから俺は遠慮しておきますってッ」
「あー、聞こえん、
俺には何も聞こえないぞー、
幼なじみの仲だ、
ここは正々堂々と引くんだ、馨ッ」
「ちょッ咲斗先輩〜ッ」
無理矢理手を引かれ、
連れていかれる俺。
これで俺の
平凡な高校生活は
1日も経たずに幕を閉じた。