無慈悲な水の記憶

「俺の平凡な高校生活がぁ〜。」

ため息を吐き
部室のドアをバタンと力任せに閉めると
目の前に写ったのは
夕暮れのオレンジの空


「おいおい、馨。
ため息なんかつくと幸せが逃げてくぞ〜。
母ちゃんがよく言ってただろッ」

「よく聞きますけど、…
あんなんあったらため息つかない奴の方が異常ですッ」

現在、午後六時
あれから三時間が経った今

三時間前までは気が楽だったが
三時間経てばぐったりとする体を
無理矢理引きずり
家へ帰宅しようと重たい足を動かす。


「ははッまぁ、入部時は何処の部活もそうだよッ
皆、新入学生をターゲットに
入部誘いにくるのが当たり前、
そんなに気落とすなよ、馨ッ
なんやかんや言って結構楽しかっただろ?
演劇部の奴らは」


「まぁ、そう言われたら
否定は出来ないですけど…」


三時間ずっと
教室一個分くらいある
二階の2-Aの隣の個室で
部員の自己紹介やら
演劇部の活動について説明を受けていた。

そんなことをしていたら
すでにもう夕方の六時過ぎ。


「皆の名前もう覚えたか?」

「…多分、名字だけなら
覚えた自信はありますッ」

「名字だけかよッ
まぁ無理もないか、
分かるだけ言ってみッ」




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