無慈悲な水の記憶
「あいうえお、
かきくけこ、
さしすせそ、」

部室内に響く発声練習

「赤巻紙、青巻紙、黄巻紙」
「隣の客はよく柿食う客だ」


部活に入部してから
半年が経とうとしていた。

だいぶ先輩方や
部員とも気軽に話せるようになったし
…って、逆に気軽過ぎて
上下関係が無く
ウキウキしていると言うか…。


「よーしッ発声練習終了
次は各自、秋大会に向けての
台本読みに掛かってくれッ」


そういうと
咲斗先輩は部室から出ていった


「おーいッ馨ッ
一緒に掛け合いしようぜ」

声をかけてきたのは
2-Dの小野克哉先輩。

趣味は悪戯、
普段はおちゃらけオーラ出しまくりだが
学年一成績、頭脳が良い優等生。

耳を疑うのが普通だろうか。


そう俺達はあと1週間後に
控えている秋大会に向けて、
練習をしている真っ最中。

一年生一同
初の大会での舞台演技。

台本は
「無垢なエキセントリック」


世界が終わりを告げる時がテーマの
主人公、クラヴァルと恋人ミリウスの
シリアスラブストーリー。



部員八人全員が役を貰った。
役は既に決まっており
俺の配役はクラヴァルの親友のカイド。
基本的出る幕は少ないが
世界が終わりを告げる前に
自分で命を立ってしまう。
愛する妻を事故で亡くし
世界にもう残すものはないと
自ら命をたった。


今日から立ち稽古が始まり
本格的に動きだす。


立ち稽古前に
小野先輩と最終チェックの掛け合いをした。
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