無慈悲な水の記憶
「嘘だと言ってくれ…」
「いえ、クラヴァル…
これは現実なんです…ッ
決して目を背けてはいけないことなのッ」
「……、世界が滅びる?
馬鹿げてる…世界が明日で
終わりを告げることなどあるはずかない…ッ」
「お願いックラヴァルッ
私を信じて…っ」
中盤に差し掛かろうとした時
部室は熱気と緊張の空気で埋め尽くされた。
咲斗先輩が演じる主人公クラヴァルと
同じく三年の、唯一の女子
相羽悠里先輩が演じるミリウス。
世界が明日で滅びると告げるミリウスを
半信半疑に疑うクラヴァルの
熱い熱のこもった演技。
「私達が今出来ることをしなきゃいけないの…クラヴァル」
「……」
「例え世界が滅びようとも
私達二人はずっと一緒よッ
だから…大丈夫」
震えるクラヴァルの肩を
優しく抱き締めるミリウス。
場面が変わり
一旦照明が暗くなると
三人の兄弟が出てきた。
「兄さん…これでよかったんですか…?」
末っ子の浪矢彰、演じるスバル。
「そんな暗い顔すんなよッスバルっ
俺達は悪いことなんてしてねぇ
世界なんて滅びはしねぇから」
次男の小野克哉、演じるアズリード。
「大丈夫だから。
心配しなくていい。
お兄ちゃんがついてるからっ」
長男の春風和人、演じるアカルド。
「世界が滅びたら
人は混乱し死を選ぶのだろうか。
なんと興味深いんだ」
恐怖などあるはずのないかのような
鋭いセリフを放ったのは
柚木和音、演じるカーナド。
「世界に残すものは
俺の記憶だけでいい」
俺が演じる、カイド。
その妻役の宵月梓、演じるエミル。
一通りの通しは終わり、
1週間ただ同じことの繰り返し。
暗記して場所も行動も全て毎日同じ稽古。
しかし全くの苦ではない。
後は
1週間後の大会当日に
全ての力出し切るしかなかった。